にほん むかしばなし だいいちわ
ももたろう
もも たろう
S C R O L Lむかし、ある ところに
むかし むかし、ある ところに、おじいさんと おばあさんが すんで いました。
おじいさんは やまへ しばかりに。おばあさんは かわへ せんたくに。
ふたりの くらしは とても しずかで、ときどき かぜが たけばやしを ゆらす おとだけが、いえの まわりで うたって いました。
かわへ
ある ひの こと。おばあさんは いつもの ように、かわへ せんたくに でかけました。
みずは つめたく、すきとおって いて、こいしの ひとつ ひとつまで みえる くらい。
——と、その ときです。
とおくの ほうから、なにか おおきな ものが ぷかり、ぷかりと ながれて きます。
ゆれながら、まわりながら、こちらへ、こちらへと。
それは みた ことも ない ほど おおきな、まんまるの ももでした。
おばあさんは めを まるくして、てを のばしました。
おうちへ
おばあさんは、やっとの ことで ももを かかえて、いえへ もちかえりました。
「おじいさん、おじいさん。みて ください。こんなに おおきな ももが、かわから ながれて きましたよ。」
おじいさんも びっくり。ふたりは ももを だいどころの まんなかに ごろんと おいて、しばらく ただ ながめて いました。
その とき
ほうちょうを てに とった、その とき。
ももが ひとりでに、ぱっかりと われたのです。
なかから あらわれたのは——
げんきな、げんきな おとこの あかちゃん。
ももたろう
「まあ、なんと いう こと。」
こどもの いなかった ふたりは、この こを かみさまからの さずかりものとして、たいせつに そだてる ことに しました。
ももから うまれたから——なまえは、ももたろう。
すくすくと
ももたろうは、ふしぎな くらいに すくすくと そだちました。
いっぱい たべると いっすん のびる。にはい たべると にすん のびる。
やがて、ちかくの こどもたちの だれよりも おおきく、だれよりも ちからの つよい、やさしい しょうねんに なりました。
おにがしまへ
ある とき、ももたろうは おじいさんと おばあさんに こう いいました。
「うみの むこうの おにがしまでは、おにたちが むらを あらし、たからものを やまほど ためこんで いるそうです。わたしは、これから おに たいじに いって まいります。」
ふたりは すこし さびしそうに、けれど ほこらしげに うなずきました。
きびだんご
おばあさんは、にほんいちの きびだんごを こしらえて、ふろしきに つつんで くれました。
「これが あれば、どんなに おなかが すいても だいじょうぶ。」
ももたろうは、こしに ふろしきを さげて、ひのまるの はたを ひと ふり。あさひの なかを、いっぽ また いっぽと、みちを あるきはじめました。
いぬ
はたけの むこうから、いっぴきの しろい いぬが はしって きました。
「ももたろうさん、どちらへ。」「おにがしまへ おに たいじに。」「それなら わたしも おともいたしましょう。きびだんごを ひとつ ください。」
いぬは にほんいちの きびだんごを うけとり、はねて よろこびました。
さる
やまみちを のぼって いくと、こずえの うえから こんどは さるが おりて きました。
「ももたろうさん、わたしも おともを。きびだんごを ひとつ。」
こうして にひきめの なかまが できました。
きじ
とうげを こえた ところで、こんどは いろ あざやかな きじが まい おりて きました。
「ももたろうさん、そらから てきの ようすを みて しんぜましょう。きびだんごを ひとつ。」
これで、いぬ、さる、きじ。さんびきの たくましい なかまが そろいました。
うみの ほとりで
みんなで やまを くだり、のを こえ、とうとう ひろい うみの ほとりに たどりつきました。
すいへいせんの むこうに、くろく ぼんやりと、おにがしまの かげが みえます。
ちいさな ふねを みつけて、ももたろうたちは うみへと こぎだしました。
なみは、しだいに たかく。そらは、しだいに ひくく。
ふねは ぎしぎしと きしみ、かぜは うなりを あげて きました。
けれど、だれ ひとり ふりかえろうとは しません。
——おにがしまは、もう すぐ そこ。
おにがしま
ついに おにがしまの きしに ふねが つきました。
いわやまの うえには おおきな てつの もん。その むこうから、ずしん、ずしん、と おもたい あしおとが ひびいて います。
きじが そらへ まい あがり、しろい はねで もんの うえから なかを のぞきこみました。
けっせん
きじが ひらりと おにの かおへ とびかかり。
さるが きの えだを ぶんぶん ふりまわし。
いぬが するどい きばで おにの あしに くらいつく。
そして——
ももたろうの ひと たち
おにがしまが、おおきく ゆれたのです。
こうさん
とうとう おにの かしらは ひざを つき、りょうてを ついて あやまりました。
「どうか、いのちばかりは おたすけ ください。これからは にどと、ひとの さとを あらしませぬ。」
ももたろうは、ふかく うなずきました。「よし。その ことば、わすれるな。」
たからもの
おにたちが ためこんで いた たからの やま——
きんいろの はこ、ぎんいろの たま、うつくしい きものの たば たば。
その ぜんぶを にぐるまに つんで、ももたろうたちは ふたたび ふねで、うみを わたって かえって いきました。
ふるさとへ
あさ、ももたろうの ふるさとに、にぐるまの おとが ひびきました。
むらの ひとびとは みな、いえから とびだし、こえを そろえて むかえました。
おじいさんと おばあさんは、もんの まえで ももたろうを だきしめ、いつまでも てを はなしませんでした。
めでたし めでたし
こうして、ももたろうと いぬと さると きじは、おじいさんと おばあさんと むらの ひとたちと、ながく しあわせに くらしました。
いつしか おじいさんの しらがは ゆきの ように しろく なり、ももたろうは りっぱな おとなに なって、こんどは じぶんの こどもに、この はなしを かたって きかせました。
——むかし むかし、ある ところに。
おわり ← ポータルへ戻る